うるせえな放っておいて。
良い加減嫌になってきた。
もう20回は超えたであろう台詞を聞いて、キングはトレイをぶん投げた。
からんからん、と乾いた音が響く。
ホセと違ってウィングはちゃんと食事を取る分医者としては楽だ。
「はぁ…」
バラバラになった食器を集めて、積み上げて。
食事は摂るが出ては来ない。
全くここはホテルじゃないのに、と別の意味で腹が立った。
「こんにちはキング様。」
「だんだんよそよそしくなってきてるね君。」
「はい。」
最短記録だぜ僅か2文字!!
心の中で小躍りしながらキングは言った。
「なんか用でもあったの?」
「ウィングは大丈夫ですか?」
「もう直ぐ黄泉の国に行けるって。ツアーで一儲けってはしゃいでたぜ。」
「私も連れて行って欲しいです。」
「冗談だよ天然オパールめ。」
だんだん可愛く見えてきた。
多分猫耳の影響だと思う。
「フェニックスも出てこないんですか?」
「…ま、たまに飯作ってくれるけど。」
ニッとして、キングはそう言った。
「もう、1月も終わるな。」
「はい。」
遥かに低い頭を見下ろしながら、キングは呟いた。
「アクアちゃん。」
「アクアって呼んでくれないんですか?」
「アクア。」
「なんですか?」
ラブストーリーなら、キスの1つもあるだろうけど。
キングとアクアはそんな関係になることは一生ない。
小さなアクアを見て、ぼんやりとキングは思った。
こいつは、俺が死んだら悲しんでくれるかな。
キースは誰にでも優しかった。
だから愛されて、誰にでもその死を悲しまれた。
君は俺の死を悲しんでくれるのだろうか。
こんな風に、隠れて泣いてくれるのだろうか。
「アクアちゃん。」
「なんですか。」
「ホセのこと好き?」
「当たり前です。」
「死んだら悲しい?」
「当然です。」
じゃあ、俺は?
聞けなかった。
怖くて。
歯に絹着せぬどころか磨きをかけて襲ってくるアクアの罵詈雑言に、耐えられるとは思わなかったから。
「フェニックスのことも、頼むな。」
「お兄ちゃんによります。」
じゃあ大丈夫だ。
キングはまた笑った。
「じゃな。俺はユニコーンのツノ磨きだから。」
キングはアクアに背を向け歩き出す。
「…ねえ、キングさん!!」
「…?」
「死なないで下さいね…?」
「ばぁーか。死ぬかよ俺が。」
何にせよ悲しくなんてねーだろーが?
ケラケラ笑って続けようとした、自虐に近い嘲笑を糾弾によって遮られた。
「私は悲しいですからっ!!ウィングでもキングでもお兄ちゃんでもキースでもフェニックスでもっ!」
誰かが死んだら、悲しいじゃないですか。
「なーぁに言っちゃってんのアクアちゃん。かわいーなありがと。」
良い子だな、キングはそう言って、そっと泣いた。
ごめんな、俺はもう。
一年ともたない。


