「おかえりにゃぁ。」

「…」

「どうしたにゃ?ホセくん?」

俯いたまま止まっているホセに、ヤーンは不思議そうに言った。

「にゃにゃにゃ?」

「…」

「ヤーン、避けろ!!」

「!」

前触れ無く突き出された左手が、僅かにヤーンの頬を擦った。

「…にゃにゃ?」

「ネコ。」

ホセはにぃ、と嗤う。

「アソボ。」

「!」

「ヤーン!やばい、殺されるぞ!!」

激しい跳躍に石の床にヒビが入り、その勢いのままヤーンに飛びつく。

「!」

避けた所に、拳が飛んでくる。

「っ!」

キセノンが赤い水晶を放った。

バリアがヤーンを包み、何重にも展開される。

「おいおいおい…!」

派手な音を立ててバリアが砕け散った衝撃で、ヤーンが吹っ飛ばされる。

ほぼ同時にボキッと嫌な音がして、ホセの拳が砕ける。

「腕が…!」

魔法を使った感じもないのに凄いスピードでホセの腕は再生して来た。

スレプトラットを超える再生力だ。


勝てない。

戦ったら、死ぬ。


キセノンはホセに背を向け、二人に叫んだ。

「逃げろ!この城ごと殺す!!」

負けず嫌いのヤーンも今回ばかりは頷いた。

「了解にゃぁ。スレプト、頼むにゃよ!」

「痛そうでやだな。」

スレプトは二人の背中を守るように立った。

「…ネズミ。」

「そうだよ。」

その瞬間、ぐちゃぁ、と肉が潰れる音がした。

内臓を破壊され、スレプトラットは呻く。

「あ…やばい…ごめん…ヤーン…」

スレプトラットは呻いて、死を嗅いだ。

間に合わない再生。

繰り返される破壊のままに、スレプトラットの身体は壊れていった。

ゆっくりと、確実に。

首筋に牙があてがわれ、皮膚が切り裂かれる。

吹き出した血飛沫に、目の前が真っ赤に染まり、ほぼ同時に視界が消える。

間髪入れず内臓を掴み出される感覚にスレプトラットは耐えられずに吐き戻す。

結局、スレプトラットが再生しなくなるまでに要した時間は僅か数秒といったところだった。


「…!」

次に襲いかかったのはキセノンで、瞬時に生まれた炎を突き破りホセは首の肉を噛みちぎった。

一瞬でキセノンは絶命する。


「ねこ。」

逃げられないと悟り、ヤーンは振り向いた。