☆Friend&ship☆-償いの吸血鬼と罪深き種族の運命-


ヴィセーブが半泣きになってから数分が過ぎた頃、遠慮がちなノックが聞こえた。

最も、聞こえたのはフェニックスとヴィセーブだけのようだったが。

「先輩だぁっ!!」

脱兎の如く蜘蛛の子を散らすように電光石火のスピードで疾風迅雷。

吹き飛ばしかねないスピードで玄関の裏口を開けると、ぴょこっと尻尾と獣の耳が飛び出た。

「会いたかったよ、先輩っ!!」

「おいヴィス!ちょっとそこどけ!」

応えたのは背の高いガタイのいい男で、なぜなら彼がセレンを背負っていたからだ。

「…すみませんミューズ先輩…ゴホッ…油断していて…」

疲れ果てたような声でそういった、乱暴に麻布を巻きつけられたセレンの細い両腕には、やけに大きく見える黒い手枷。

むき出しの両足には、大きな鉄球を2つづつ付けられていた。

「先輩…酷い…っ」

「毎度のことで泣くなヴィス。」

セレンはそう言いながらもミューズの背中にすがりついていた。

「大丈夫か、ロス?」

「…平気だ。」

言葉とは裏腹に、目を閉じたままセレンは動かない。

「おいセレン?一体どうしたんだよ?」

「知らないのか?この星は」

「光と闇が交差する、ですか。」

「ん、お嬢ちゃんは魔界から来たのか?」

ミューズは微笑んでそう聞いた。

アクアは謎の人見知りを発揮して、キースの後ろに隠れている。

「そう、ここの身分は画一化されててな?華族、平民、隷族ってな具合に。」

この家は表は華族が住む高級住宅街つか通称華族街に面してて、反対は隷族が住んでるスラム街に面してるんだ。

スラム街の向こうに平民が住んでる住宅街もある。

隷族に人権は認められてないんだ。

暮らしも色々規律がある。

誘拐、監禁なんてのももう普通だな。

家屋に入るには許可を得なくちゃいけないし。

「ちなみにヴィスは華族。俺が平民でロスは隷族なんだ。」

往来は禁止されてねーからな。

とミューズはいった。


「せんぱい…」

「ヴィス。」

ベッドに寝かせられたセレンを、ヴィセーブは心配そうにペロペロ舐めている。

「ヴィス…」

無表情ながらも迷惑そうにセレンは呻いて、半身を起こした。

「ほら、膝いいぞ。」

セレンは意味深にそう言って、ポンポンと二度腿を叩く。

「っっdykvzdっkcdすl!!」

と狂喜したヴィセーブがグイと背筋を丸めると。

「!」


両手にはモサモサと毛が生え。

腰のあたりにふわりと生えたこげ茶の尾をふぁさりと揺らす。

おもむろに顔を出した両耳に、髪色も微かに暗くなる。

その上全体に少し縮んだヴィセーブは、セレンの腿に飛び乗った。