眠気が辛い3限目。お腹空いたなぁなんて考えながら、友達と教室を移動する。賑やかな廊下でもすぐに見つけられる背中をちらりと気にしながら、何ともないようにおしゃべりを続ける。近いようで遠い距離。そして、決して近づくことのない距離。いつも通り、思考がそこまでたどり着いたところで考えるのをやめた。


暖かい日差しに後押しされて、夢見心地の頭はどうにも授業に集中してくれない。しばらく教科書とにらめっこをしていたものの、眠気におされ、シャーペンを置いた。ついこの間まで続いた残暑は、突然の大雨と共に消え去り、夏服からのぞく素肌をなでる風は少し冷たい。先生はかれこれ10分以上授業に関係のない話を繰り広げているし、週末課題と夜中まで格闘したのであろう生徒たちは、私と同じく問題を解く手を止め、思い思いに過ごしている。

ふと窓の外に目を向けると、向かい側に教室が見える。こちらを見ているはずもないのに、なんとなく背筋がのびる。前髪を気にしながら教科書に視線を戻したものの、思考はズルズルとそっちに引きずられる。

『今何考えてんだろ』とか『眠そうにしてるかな』とかどうでもいいことを考えて、肝心なところには触れないように気持ちに蓋をして。好きだけど好きじゃないみたいな、気になるけど気にならないみたいな、甘酸っぱくて少し苦いこの気持ち。


「ばかだなぁ…」


何度めかわからないセリフと共に、ため息がこぼれた。