「長瀬久美ちゃん…だよね?」
話しかけられたのは高2の4月。
休み時間に私が読書をしていた時だった。
私よりも少しだけ身長の高めで、髪はショートヘアの黒髪。いかにも運動してそうな感じの女子が私の前にいた。
私は初めて声をかけられたので
とりあえず頭を縦にふっていた。
「いつも本読んでるけど、本読むの好きなの?」
笑顔でたずねるその子に私は慌てて答えた。
「え、あ、えと、別に好きとかじゃなくて今その、気になってて」
すると、その子は慌てなくても、ゆっくりでいいよ。と言いながら続けて聞いた。
私は呼吸を整えてから話した。
「えと、普段小説は読まないの。でもこの小説はテレビの特集でも取り上げられてて気になったから買って、それで今も読んでたの」
「へー!なんて小説??」
「ブラッティ・チョコレートっていうの」
「あ!知ってる!!今映画もやってるよね!!」
それから休み時間が終わる間際までずっとその話で盛り上がっていた。
いつも友達が多くて人気高くて合いそうな子とは初め思わなかったけれど、意外と話が合うことに驚いた。
それに、その子の前で初めて私は自分らしく落ち着いて話せた。
それから、私はその子と少しずつ仲良くなった。
