「これは?」


「プレゼントだよ」


「誰から誰に?」


「ああ?お前本気で分かってねーの?研究室みんなから、南にだよ。ちなみに俺セレクトだ。もうすぐ誕生日じゃん、バレンタインデー生まれの義大くぅん」


「………」


語尾にハートマークが見えたぞ、このチャラ男……


「南先輩、おめでとうございます!当日に渡すのは気が引けたので今日持ってきましたー!」


「………ありがとう」


僕をおちょくって遊びたいだけのクマ先輩と違い、後輩たちの気持ちはちゃんと嬉しい。


だが二月十四日………この日に生まれたことは自分にとって最大の不幸であると僕は思っている。


彼女がいればこの不幸が去るのかといえば、全然そんなことはない。


僕の誕生日を祝ってあげようと思ってくれる人たちに、種々の気を遣わせてしまうこと………それが一番の不幸なのだ。


「バレンタインともろかぶりなんて絶対美味しいのに、お前が本気で嫌そうにするからおもろいんだって。睨んでないで、開けてみろよ。今年は自信あるんだぞ」


クマ先輩は笑い過ぎて涙が滲む目尻をこすって、ぼくにリボンの先を掴ませた。


「じゃあ……」


スルリ、スルリ、ややスローモーション気味に真紅のリボンを解いていく。


肌色の何かがチラチラ見え始めたところで、僕を中心に取り囲んだ男たちがゴクリと生唾を飲む音が聞こえた。


オープンした瞬間の感想………なんだこれ?


「うひょーーー足だあ!」


「やばい!タイトのミニスカートで正座はダメっしょ!見える見えるって!」


ぐはぁ!の叫びと共に、白衣の男たちが床で悶え始める。


真面目一色のパソコンの横に現れたのは、女性の腰から下をかたどったマネキンのようなものだった。


赤いミニスカートで、正座している。


………意味が分からない。


「クマ先輩、なんですかこれ」


「ふふん。これはな、いつでもどこでも女性の太ももの感触が味わえる男の味方!その名も“ひざまくら”だ!」