拾われサンタ、恋をする



「亜紀さん……大丈夫ですか?」


叱られる恐怖より、魂が抜けたような様子の彼女が心配になってきて、控えめに声を掛けてみた。


亜紀さんの瞳は僕を見たまま、ぐらぐらと揺れる。


……やっぱり変だ。


僕はまだはしゃいでいる優衣ちゃんを抱えたまま、もう一度亜紀さんと向かい合った。


「あの」


「あ、だ、大丈夫です!ごめんなさい、ぼーっとして……」


「でも今、あまり大丈夫そうに見えなかったんですけど。立ちくらみがするとか、気分が悪くなったりしてません?」


「ないですよ。ちょっと……考え事をしてただけで」


そこでようやく僕と目を合わせたかと思うと、いつものようにニコっと笑って見せる。


こういう笑い方をする時は相手に安心してもらいたい気持ちからだと、先日聞いた言葉を早くも疑いたくなった。


これ以上追及しないで、と言われたような気がする。


「お腹すいたぁ」


優衣ちゃんが声を上げた。


「そうでしょう。もうごはんの用意はできているのよ。さあ、中に入って。あなたたちは手を洗っていらっしゃい」


奥さんが再び僕を中へと招いてくれて、ようやく全員が落ち着いた。






言ったその日に押しかけたというのに、大層立派なお肉ですきやきをご馳走になった。


女系家族の中でどのくらい食べてもいいのか遠慮していたら、それを見抜いた奥さんがどんどん僕の皿に肉を入れてくる。


「今日は若い男の子が来るからと思って、たくさん用意してあるのよ。遠慮しないで、たくさんお食べなさい」


「ありがとうございます」


他人に不快感を与えない話し方。


教授の奥さんとまともに話をしたのは初めてだったけど、品の良いしっかり者の奥さんだなと思った。


正月に帰省した時、恩師が言っていた言葉を思い出す。


『結婚相手を選ぶポイントは、自分にないものを持った人であることだ』


教授は大学教授というポストに収まる前は、かなりの研究バカだったと聞いたことがある。


きっと社交的な奥さんのおかげで、パワーバランスを保っていたのだろう。