拾われサンタ、恋をする



外に出たら、優衣ちゃんが夜空に向かって手を伸ばした。


「ほらね、優衣の手よりお月様が大きいんだよ」


かざされた優衣ちゃんの手は、閉じたり開いたりを繰り返す。


どうやら月を隠そうとしているらしかった。


「ね?お空大きくなったよね?」


「あ………!なるほど、そういうことか」


優衣ちゃんの言わんとしていることが分かって、その着眼点に思わず感心してしまった。


優衣ちゃんの背丈から手を伸ばしてみると、遠くにある月や星は掌で隠してしまえるわけだ。


でも大人の高さで同じことをすると僅かにはみ出る。


それを“空が大きくなる”と言っているのだろう。


「じゃあもっと大きくしてみようか」


「うん?……わあ!あはは!」


期待いっぱいに頷いた優衣ちゃんを持ち上げて肩車してやると、怖がりもせずはしゃぐ声が聞こえる。


「どう?空は大きくなった?」


「なったよぉ!こんな大きなお月様はじめて見たぁ!」


「それはよかった」


この子は肩車をしてもらったのが初めてなのかもしれない。


今日の出来事があったから、そう思ってしまうのは僕の考え過ぎだろうか。


クスクスと笑いながら近づいてきた奥さんが、頭上の優衣ちゃんに声を掛けた。


「よかったわねえ、優衣。今とっても背が高いわよ」


「ばあば小さい」


「くそぅ、肩車くらいじいじだって……」


「やめておきなさい、あなた。どうせ腰にきて明日立てなくなりますよ」


「うう………っ」


奥さんに止められ言葉に詰まった教授。


やばいなーこの優越感、くせになりそう。


「あら?……どうしたの亜紀?」


奥さんの口調が変わったのに気付いて、僕も一緒に亜紀さんの方を振り返った。


亜紀さんは一人玄関にとどまったまま、口を半開きにしてこちらをボンヤリと見ている。


まさに心ここにあらずといった状態だった。


言うことを聞かなかった優衣ちゃんプラス僕に怒り心頭といったところだろうか?


それにしたって焦点が合ってない気がする。