拾われサンタ、恋をする



もう傷つかないで欲しい。


誰にも何も劣ってなんかない。


むしろ支え合う母子の姿がどれほど尊いのか、君たちが僕に教えてくれたじゃないか。


「優衣ちゃんは自信を持っていいよ」


「じしんって何?」


「そうだなあ、自分は正しいって信じることかな」


僕の顔を見上げていた優衣ちゃんが、強く頷いた。


揺れる車内でチャイルドシートに座るのを手伝っていたら、運転席から忍び泣くじじぃ……もとい、須藤教授の声が聞こえ始めた。


「うっうっ!ふうううううんぬ!」


「慰めませんよ」


「……なぜだ!なぜお前は俺にだけ冷たい!」


「面倒くさいんで」


教授は前を向いて「ふん!」と鼻息をひとつ寄越す。


ミラー越しに見るその顔が思いっきりの泣き顔だったものだから、優衣ちゃんと手をつないだまま笑いを噛み殺した。


肩の揺れが伝わったのか、優衣ちゃんはそんな僕を不思議そうに覗き込んでいた。









僕が須藤教授の家を『須藤邸』と呼ぶのには理由がある。


娘ラブ、孫ラブのどうしようもない親父だが、曲がりなりにも有名大学の教授なのだ。


オートロックで開ける感覚の門が、グオンと音を立てて横ではなく上に開く。


駐車スペースも優に大型の車三台は停められそうだ。


専門の業者でなければ手入れは難しいだろう庭に、玄関までの長い道のり。


「……むかつくなあ」


「羨ましかったらお前もこのくらいの家建てて見せろ」


「先生の場合、完全に内助の功のおかげだって分かりますけどね」


「っとに、お前はいつもいつも可愛げのない……ほら、さっさとついてこい!暗いからって転んで優衣に怪我させるんじゃないぞ!」


「そんなことしませんよ」


親父の背中が怒っている理由はこれだ。


優衣ちゃんは車を降りてからも、僕に抱っこをせがんだ。


車の中から機嫌は持ち直していたけれど、どうやらここ何度か会う内に、抱き上げられて移動するというのがお気に召したらしい。


大した負担にもならないから「いいよ」と言ったのだけれど……これが孫バカ親父としては面白くなかったのだろう。