泣き続ける優衣ちゃんを、どのくらい抱きしめていただろうか。
コロンコロンと子守唄のように響くインターホンが園内に流れて、対応した保育士さんとともに教授がやってきた。
「遅くなってすまなかった!……ん?優衣どうした」
「イジワル言ったよぉ」
「あん?」
少し泣き止みかけていたのに、上手く説明できない悔しさとさっきの悲しみを思い出したのとで、優衣ちゃんが再び声を上げて泣いた。
その激しい泣き方に眉を潜めた教授を見て、さっきの保育士さんが代わりに説明に入った。
「すみません、お迎えがまだのお友達が優衣ちゃんが抱っこされてるのを見て、嫌味を言ってしまったんです。今残っている子達はお泊りの子達なので……羨ましい気持ちがあったのかもしれません」
よく注意しておきます、と言って僕と教授に向かって頭を下げた。
いや、それは分かるけど……言った子の気持ちは理解できても、言われた優衣ちゃんの気持ちは放っておくの?
珍しく頭に怒りの感情が走ったのを感じた僕は、優衣ちゃんの前でそれを出さないように抑え込んだ。
なんだか腑に落ちないままで気分が悪い。
「優衣ちゃん、また明日遊びましょうね」
さよならを言う先生に優衣ちゃんは何も答えなかった。
だけどその態度を注意しようとは、僕も教授も思わなかった。
遅刻魔のじいじに保育園カバンを持たせて、僕は優衣ちゃんを抱っこしたままで車まで移動する。
その間、優衣ちゃんは縋るように僕の首に腕を巻きつけていた。
車に乗り込んでからもずっとしがみついたままなので、僕もそのまま優衣ちゃんの背中をさする。
「……出すぞ、気をつけろよ」
教授が一声とともにノロノロと車を走らせ始めた。
僕の隣りには空のチャイルドシート。
「優衣ちゃん、そっちに座ろうか。危ないからね。座って手を繋いで帰ろう」
「さっき優衣嘘ついてないよね?パパいないのは優衣が悪いんじゃないよね?」
「……そうだね、優衣ちゃんは悪くない。優衣ちゃんもママも、誰も悪くないよ」

