亜紀さんの目尻からすっと走って落ちそうになった涙を見て、あっと思った時には手を伸ばしていた。
親指の腹で拭った時、ぱちりと目を開いた亜紀さんと、これまでにない距離で目が合う。
薄茶色の丸い瞳。
優衣ちゃんと似ているからだろうか、手を触られていたときよりも冷静でいられる。
「……頑張りすぎですよ」
感謝なんていらない。
誰がなんと言おうと、一番頑張ったのは亜紀さんなんだから。
それを伝えたいのに言葉がうまく出てこなかった。
さっきからずっと、自分の頬に小さく引き攣ったような感覚がある。
どうにか目を逸らさずにいたら、亜紀さんの両目から拭って間に合わない量の涙がこぼれ始めた。
「亜紀さん?」
「嘘、ごめんなさい――――っ」
亜紀さんが慌てて自分の顔を隠す。
僕に見えないように涙を止めようとして震えている様子を見て、ピンとくるものがあった。
「……いいですよ。大丈夫」
「………」
「泣けるときに泣いた方がいいって言いますし」
「私……」
「うん」
手持無沙汰になっていた手を伸ばして、おそるおそる亜紀さんの頭に触れた。
拒絶されないと分かると、置いた手でポンポンと慰めてみる。
しばらくして、細い泣き声が聞こえた。
そこからしゃくりあげるほどの泣き方に発展するのは予想外だったけれど、僕はそのまま宥めるに徹した。
この人は倒れるほど体調が悪いときでも、誰にも甘えなかった人だ。
親にさえ頼ろうとしなかった。
そうさせたのは精神力なのか、それとも……
「一人で泣こうと思ってたんでしょう、亜紀さん」
小さく頷いて返す所に本心が見えた。
甘やかされるのは困ります、そう途切れ途切れに文句を言われる。
そう言われても……打算のない涙を見せられて冷たくするわけにもいかない、男としては。
「あ、男じゃないんだっけか」
「……?」
サンタだかおつかいだか、不思議な生き物だと思われてるんだよな自分は。

