「貴大の奴……!」
僕はすぐに向かいの弟の部屋に突撃した。
カーテンを締め切った部屋の中、布団にくるまった大きい塊がある
「起きろ貴大」
「兄ちゃん……おかえり?」
「僕の部屋に溢れてるあれは何か説明しろ」
「どれえ?」
まだ寝ぼけ眼の貴大の顔に向かって、僕はアレな本の真ん中のページを突き付けた。
「ふわぉう!ナーイス!」
「馬鹿!母さんにどういう説明したんだよ!」
「あー……兄ちゃんが下宿先に置けんようなった本送って来よーたって」
馬鹿な癖に巧妙な嘘だけは上手いな。
それでほんとに僕のものだと信じてしまった母にもショックだけど。
「とりあえず起きろ、手伝え」
「えー俺せっかくの休みなんでぇ?」
「えーじゃない。責任取れ。漫画も全部捨ててやるぞ」
貴大はブツブツ言いながら手伝いに来て、アレな本をビニールテープで縛るたびに情けない悲鳴をあげ続けた。
台所では母が雑煮の仕込みをしている。
「終わったんか」
「なんとか。母さん言っとくけど、あれ全部貴大の本じゃけぇね」
「貴大はお前のじゃーて」
「僕はあんなもん読んどる暇ねぇわ」
ああ!ああ!と大袈裟に何度も納得の声を上げた母は、急に僕に優しくなった。
「東京から帰らんのんは、金髪女のケツ追いかけよるけぇか思ーて、母さん胸が痛かったんじゃー」
「……今度からもう少しマメに連絡するよ」
これ以上あらぬ疑いをかけられて困る。
居間で母と長男の会話を聞いていた父が、たまらん!と言わんばかりに吹き出した。
分かってて訂正しなかったんだな、この親父。
ようやく家の中に居場所を得た気分の僕は、こたつに入って新聞を読む。
12月31日付の新聞は、今年一年のニュースを振り返るような内容になっていた。
優衣ちゃんは今日もあのクマと一緒にいてくれるんだろうか。
そんなことをふと考えて、また会いたいなという思いにかられた。

