拾われサンタ、恋をする



凍えそうな夜に助けてくれた、もう恩人とも言える彼女に、お礼を言えたのは幸運だ。


須藤教授のゼミ生でよかった……けど代償がでかすぎやしませんか。


研究室に戻った後、僕はまたも散々からかわれるはめになったのだ。


朝から笑われっぱなしなのは、怒るほどでなくとも、いい気分でもない。


「あー楽しいな今日は」


顕微鏡のレンズをいそいそ準備している僕に、上本先輩ことクマ先輩がいきなり肩を回してきた。


「そーですね……先輩にとっては最高でしょうね」


「あーあ。相変わらず無表情だねぇ、義大くん。怒ってんなら怒った顔しなさいよ」


頬にプニっときた男の指に、今日一番苛ついたんだけど。


「……無表情ですか。よく言われたなぁ。感情のない顔と困った顔しかできないのかって」


「誰に誰に?誰に言われたの?」


「……元カノです……って、これを言わせたいだけでしょう」


「はっはっ!もう、怒らない怒らない」


研究室のメンバーは、実験の内容によっては数日この部屋で寝食を共にすることもあり、家族さながらの付き合いである。


付き合いはまさに男兄弟と言った感じで、悪ふざけが好きな奴らだ。


「そうだ、僕十一時になったら一旦抜けるんで」


「義大の排便は時間の決まりがあるのか!」


「なわけないでしょう。知人と約束があるんです。先に飯でも食べてきます」


「俺も一緒に食いにでよーかな」


「絶対ダメ」


「……へえ、じゃあ今度、理由をがっつり教えてもらうことにするよ」


変なとこするどいなぁ、この人。


先輩から背中にバシバシと二発カツを入れられた。


ふふん、と笑う横顔は同じ男でも見惚れる。


目の下に色濃く引かれたクマさえなければ、この人ならそこそこモテると思うのに……残念な人だ。