夕暮れ時。
村に、悲報は流れた。
村外、滝酒山の麓付近で青年の死体が見つかったらしい。
顔を鋭い爪のようなもので抉られていたため、身元はわからなかった。
私は、すぐに見つかった青年の死体を確認したが、服装や体型からしておそらく、今朝依頼をしにきた青年で間違いないだろう。
「....、馬鹿ね......」
死体を見つめながら呟く。
幸いにも、辻は酔っ払っていたらしく、眠りこけていたのだとか。
この知らせを辻が知ったのは翌日のことだった。
辻には、こんな酷いもの、見せられないからね。
そう思うと、今日は仕事に来てなくてほんとに良かったわ。
青年を殺めたものの正体は、傷跡からして猛獣だろう。
死体の近くには、太い木の棒があったことから、抵抗はしたのだろう。
だけどね、こんな木の棒じゃ、猛獣には勝てないのよ。
「...はぁ、寝覚め、悪いじゃない」
「自分が見捨てた依頼人が死ぬのが、そんなにも寝覚めの悪いことかしら?」
死体とにらめっこをする私に声をかけてきたのは
「姉様...。なんでそのことを?」
姉様は、青年へ手を合わし、私の隣へ腰掛ける。
表情は、どこか暗く、瞳は寂しげだった。
「彼に、貴方を勧めたのは私よ」
え...?
なんで、そんなことを。
どうして?
姉様は答える。
「彼を見てたらね、昔の私を思い出しちゃったのよ。だから、貴方なら助けになってあげると思ったのだけれど...」
一つ、溜息を吐き、冷たい視線を私に向けた。
「貴方の選択、間違っていなかったと思う。でもね、正解でもないわ」
「.....」
そう。
そうよ。
あの時、彼が一人で探すと言って家を飛び出したとき、殴ってでも止めるべきだった。
私一人で行けば、こうはならなかった。
なのに私は、依頼人を、彼を見捨てたんだ。
「...今日も、街で行方不明者が出たわ」
姉様は、私の頬に手を伸ばし、顔を見合わせる。
その瞳は、やっぱり切なそうで、悲しそうだった。
「貴方がしないといけないこと、わかってるわよね」
「...」
「連続してる行方不明者。その失踪の原因を、絶対に解明しなさい。そして、行方不明になっている人達を必ず見つけ出しなさい」
まるで、私に怒りをぶつけるように話す言葉。
「それが、彼にできる唯一の罪滅しよ」
それだけ残し、姉様は姿を消した。
言いたい放題言って、ほんと自分勝手な姉様だ。
まあ、今回は私が悪いのだしね。
お店はしばらく閉めなければ。
辻にも、言わない方がいいわね。
今回ばかりは原因がわからない上に、危な過ぎる。
「よし...」
立ち上がった私は、死体に背を向けた。
夕暮れの光に照らされ、一人家路へと付く。
今日も辻は帰ってこないのだろう。
「駄目ね。少し我慢しなきゃ...」
村の小道。
家へと通じるその道でポツリと零したそれは、誰にも聞かれることなく消える。
陽がくれる様は、とても寂しく、なんだか切なかった。
暫く、この小道を歩き帰宅する。
村に、悲報は流れた。
村外、滝酒山の麓付近で青年の死体が見つかったらしい。
顔を鋭い爪のようなもので抉られていたため、身元はわからなかった。
私は、すぐに見つかった青年の死体を確認したが、服装や体型からしておそらく、今朝依頼をしにきた青年で間違いないだろう。
「....、馬鹿ね......」
死体を見つめながら呟く。
幸いにも、辻は酔っ払っていたらしく、眠りこけていたのだとか。
この知らせを辻が知ったのは翌日のことだった。
辻には、こんな酷いもの、見せられないからね。
そう思うと、今日は仕事に来てなくてほんとに良かったわ。
青年を殺めたものの正体は、傷跡からして猛獣だろう。
死体の近くには、太い木の棒があったことから、抵抗はしたのだろう。
だけどね、こんな木の棒じゃ、猛獣には勝てないのよ。
「...はぁ、寝覚め、悪いじゃない」
「自分が見捨てた依頼人が死ぬのが、そんなにも寝覚めの悪いことかしら?」
死体とにらめっこをする私に声をかけてきたのは
「姉様...。なんでそのことを?」
姉様は、青年へ手を合わし、私の隣へ腰掛ける。
表情は、どこか暗く、瞳は寂しげだった。
「彼に、貴方を勧めたのは私よ」
え...?
なんで、そんなことを。
どうして?
姉様は答える。
「彼を見てたらね、昔の私を思い出しちゃったのよ。だから、貴方なら助けになってあげると思ったのだけれど...」
一つ、溜息を吐き、冷たい視線を私に向けた。
「貴方の選択、間違っていなかったと思う。でもね、正解でもないわ」
「.....」
そう。
そうよ。
あの時、彼が一人で探すと言って家を飛び出したとき、殴ってでも止めるべきだった。
私一人で行けば、こうはならなかった。
なのに私は、依頼人を、彼を見捨てたんだ。
「...今日も、街で行方不明者が出たわ」
姉様は、私の頬に手を伸ばし、顔を見合わせる。
その瞳は、やっぱり切なそうで、悲しそうだった。
「貴方がしないといけないこと、わかってるわよね」
「...」
「連続してる行方不明者。その失踪の原因を、絶対に解明しなさい。そして、行方不明になっている人達を必ず見つけ出しなさい」
まるで、私に怒りをぶつけるように話す言葉。
「それが、彼にできる唯一の罪滅しよ」
それだけ残し、姉様は姿を消した。
言いたい放題言って、ほんと自分勝手な姉様だ。
まあ、今回は私が悪いのだしね。
お店はしばらく閉めなければ。
辻にも、言わない方がいいわね。
今回ばかりは原因がわからない上に、危な過ぎる。
「よし...」
立ち上がった私は、死体に背を向けた。
夕暮れの光に照らされ、一人家路へと付く。
今日も辻は帰ってこないのだろう。
「駄目ね。少し我慢しなきゃ...」
村の小道。
家へと通じるその道でポツリと零したそれは、誰にも聞かれることなく消える。
陽がくれる様は、とても寂しく、なんだか切なかった。
暫く、この小道を歩き帰宅する。
