「その笑顔、忘れんなよ?」

「……え?」

「その笑顔を忘れなかったら、お前はピンクなんかなくたって可愛いんだから。」



 初めて竹田に「可愛い」と言われ、顔中が熱くなる。そんなあたしを見た竹田は、何故か大笑い。ありえない、とこぼすと、「ごめん」と謝られた。

 距離を詰めてきた竹田が、あたしの頭をポンポンと撫でる。“機嫌直せよ”って言ってるみたい。安心してよ、とっくに直っちゃったからね。



「明日、朝迎えに来るから。」

「え、何かカップルみたいだよ?」

「違うのかよ!さっきの俺の告白は何だよ!!」

「……冗談です。是非わたくしめとお付き合い下さいませ。」

「……誰、お前。」



 最後の数分間は、二人して大笑い。「またね」と言って別れ、明日に思いを乗せた。

 ──目覚めると、気持ちの良い朝。御召茶色のシュシュを髪に結ぶ。女の子らしさをピンクに求めていた自分が、数年前のように懐かしい。



「あたし、これからも“Ms. BLUE”のままで良いんだね!」

「いや、お前“Ms.”って雰囲気じゃないから。」

「じゃあ何よ?」



 ──耳元で、囁かれた言葉。その響きと微かな吐息は、胸の奥をキュンと締め付けた。



fin.
→後書き