「いただきます!」

「はい、どうぞ。真子は朝から食欲があって、見てて気持ちが良いわね。真澄なんて、朝練があるのに『いらない』なんて言ったのよ?また遅刻かしらねぇ……」



 ふーん、と相槌を打ちながら、鮮やかな藍色の茶碗を手に取る。ほかほかのご飯は鮭によく合う。こんな美味しいご飯を食べずに学校に行くなんて、サッカー部所属の高1の弟、もとい真澄は、何て馬鹿なんだろう。スポーツ選手にとって、朝ご飯はとても大事だろうに。



「……あら、新しい髪留め買ったの?可愛いじゃない。」



 お母さんがあたしの前髪に刺さる、青系のグラデーションを用いて花をかたどったガラス細工の付いたピンを見て言った。気付いてもらえたことに、内心笑みがこぼれる。



「これ?こないだ雑貨屋で見つけたんだけど、今お気に入りなの!」

「良かったじゃない。でも、あんまり無駄使いはしないのよ?」

「はーい……あ、もうすぐ京花の誕生日だからケーキ焼くの手伝ってね!ごちそうさま!!」



 早口に言うと再び洗面所に行って、半透明の青い歯ブラシでシャコシャコと歯を磨く。これでようやく出発できる。あたしは鞄とスカイブルーの傘を手に、元気良く玄関を後にした。



「行ってきまーす!」