「──明日は学校休みなさいね。先生には、さっき連絡しておいたから。」



 機転を利かせてそう判断してくれたお母さんに小声でお礼を言って、再び布団にもぐる。お母さんは、あたしの食べかけが残る食器を片手に、部屋を後にした。

 いつもはペロリとたいらげる量が、今日は酷く苦痛に感じた。胃が小さくなったということにしておこうか。こういう気分の時は、そういう理由付けをするに限る。



「……はぁ、憂鬱……」



 こんなにセンチな気分になったのは、生まれて初めてかもしれない。七年前のエイジ君の件よりも心傷は大きいとみた。

 あいつは……竹田は今頃、あたしが取った態度を気にしているんだろうか。それとも、すっかり忘れてゲームに明け暮れているんだろうか。いずれにせよ、奴にあたしの気持ちが分かる筈がない。言ったこともないし……これから言おうという勇気も、根こそぎなくなってしまった。



「……寝よ寝よ。寝て忘れるのが一番!」



 忘れられることを、ひたすら祈る。布団の中で何時間も眠れない寝返りを打っている内に、いつの間にか意識がふつりと切れていた。

 ──夢の中では、あいつの言葉が幾度となくこだまし続けた。