チャプター7
「キムタクLOVE」
『無いのならつくってしまえ帰る家』ラーメンを食べた帰り道、福生がホームレスを見て詠んだウタである。『無いのなら死んでしまえよホームレス』真似して林檎が詠んだウタだ。どちらもウタとして意味が成立していない。どちらかと言えば林檎のウタはギリ体裁をたもっているだろうか。かの有名な戦国大名を真似て適当に詠んだだけである。しかし、二人の心は詠めていた。
福生の人生において、本当の意味での帰る場所といったものが、見事に欠落している寂しさが、そのウタには潜んでいる。
過去においては両親の不在。これから先も自分で家族というものを手に入れることなど在りはしない。寂しさを栄養として成長してきたこの男は、真の天涯孤独者で、そんな自分が好きだった。本当に孤独な人間は寂しくなどないのである。
福生にとって帰る場所とは即物的な意味で自分の部屋である。福生にとって自分の部屋は、自分が家賃を支払いながら、稼いだ金で障害者用にリフォームまでした己の要塞であり、脚本家になるという夢を叶える為の仕事場である。
林檎のウタには、今日死を選び、実行した自分を少しだけ肯定しようとする思いが潜んでいる。
水没して使い物にならなくなった携帯を、林檎が朝日の昇った空に放りなげた。携帯は綺麗な放物線を描き、二人の頭の上を走る国道に叩き付けられコッパミジン!
福生も自分の携帯を取りだし、
福生「鳴らぬなら殺してしまえマイテレホン」
林檎「鳴ってても我孤独なりマイテレホン」
福生のウタは鳴らなくなった携帯を詠んだウタではない。福生の携帯は鳴らないのだ。福生を必要とする者などいないから。
林檎は尋ねた、
「投げないの」
福生「おれのはキムタクがCMしてる防水だから」
林檎「ミーハーだね」
福生「キムタク好きだから」
林檎「キムタクだったらアンタの方がマシだけどね」
林檎は致命的な程、B専である。
福生の携帯が鳴り始める兆しであった。
「キムタクLOVE」
『無いのならつくってしまえ帰る家』ラーメンを食べた帰り道、福生がホームレスを見て詠んだウタである。『無いのなら死んでしまえよホームレス』真似して林檎が詠んだウタだ。どちらもウタとして意味が成立していない。どちらかと言えば林檎のウタはギリ体裁をたもっているだろうか。かの有名な戦国大名を真似て適当に詠んだだけである。しかし、二人の心は詠めていた。
福生の人生において、本当の意味での帰る場所といったものが、見事に欠落している寂しさが、そのウタには潜んでいる。
過去においては両親の不在。これから先も自分で家族というものを手に入れることなど在りはしない。寂しさを栄養として成長してきたこの男は、真の天涯孤独者で、そんな自分が好きだった。本当に孤独な人間は寂しくなどないのである。
福生にとって帰る場所とは即物的な意味で自分の部屋である。福生にとって自分の部屋は、自分が家賃を支払いながら、稼いだ金で障害者用にリフォームまでした己の要塞であり、脚本家になるという夢を叶える為の仕事場である。
林檎のウタには、今日死を選び、実行した自分を少しだけ肯定しようとする思いが潜んでいる。
水没して使い物にならなくなった携帯を、林檎が朝日の昇った空に放りなげた。携帯は綺麗な放物線を描き、二人の頭の上を走る国道に叩き付けられコッパミジン!
福生も自分の携帯を取りだし、
福生「鳴らぬなら殺してしまえマイテレホン」
林檎「鳴ってても我孤独なりマイテレホン」
福生のウタは鳴らなくなった携帯を詠んだウタではない。福生の携帯は鳴らないのだ。福生を必要とする者などいないから。
林檎は尋ねた、
「投げないの」
福生「おれのはキムタクがCMしてる防水だから」
林檎「ミーハーだね」
福生「キムタク好きだから」
林檎「キムタクだったらアンタの方がマシだけどね」
林檎は致命的な程、B専である。
福生の携帯が鳴り始める兆しであった。
