七色の空

チャプター6
「究極のラーメン」

時代はかわる、ラガーはかわるな
何とも月並みなキャッチコピーだと、福生は寂れたラーメン屋のテレビでCMを見て思った。かわらないモノなど有りはしない、仮にあったとして、変わらないなんてことは何て愚かなことだと男は想っていたからである。福生は、自分が乳児期に両親によって棄てられたことを始めて孤児院の園長から告げられた15才の夜、胸がときめいた。そして、今日もあの日と同じ気持ちで、シャワーを浴びて出てくる林檎をコインランドリーで一人待っている。
尾崎豊の『15の夜』は、福生にとってアカの他人がつくった曲だとは思えなかった。福生の口癖、「なん回忌とかって尾崎が世間で騒がれたりするとさぁ他人事とは思えないねぇ」しかも独り言の口癖。誰もこの口癖を聞いたものはいない。
林檎がシャワーを浴びてコインランドリーに戻ってきた。メンズのTシャツに下半身にはタオルを巻いている。中に入るなり、入口付近の扇風機で乾かしていた車椅子に腰掛けると、タイヤを転がし福生の目の前でとまって、ニッコリ笑ってみせる。福生はズボンを乾かしていたので、林檎同様うえはTシャツにトランクスの格好でベンチに座って待っていた。この時、福生の目の前の林檎がどれだけ可愛く見えたか想像できるだろうか?林檎の歳は28と若くない。しかし、天性の童顔で且つ広末似である。しかも、AV女優を目指していることもあってか何処か卑猥。広末の顔に旨い具合にジャブが入ったその顔は、本家とくらべて飽きがこない。究極のラーメンみたいでしょ。
ニッコリ笑ったあと、林檎はこう続けた、
「ただいま」
 少し間をおいて…
福生「おかえり」
この後、二人は近くの屋台でラーメンを食べる。