ﾁｬﾌﾟﾀｰ48
「君の為にできること」
福生は、残された時間の中で、林檎の為にできることを考えていた。一番よいことと言えば、自分が死なないことである。しかし、さすがにソレは叶わない。二番目のアイデアとゆものは、何とも頭に浮かんでこないものである。浮かんだところで、確かにそれが２番目かどうか確信に至らない。
この悩みから解放されるのは、福生が天に召される時だ。この人生最大の難問が、福生の心を駆り立てる。福生の体が騒ぐのだ、「強い奴と闘いてェ―」と言っている悟空の様に。
福生は、何度も心の中で叫でいた！
「この謎は解いてみせる！ジッチャンの名にかけてッ！！」(「金田一少年の事件簿」より一部抜粋)


ﾁｬﾌﾟﾀｰ49
「ホームレス」

裸の林檎が、床に敷かれたシーツの上に、うつ伏せで寝ている。床と脇の間から、溢れでる乳房が時折、綺麗なピンク色の乳首を覗かせる。
福生が針で林檎の背中に刺青を掘っている。林檎が背中に翼が欲しいと言ったのだ。肩骨の上に、小さな翼を左右に1つずつ彫っている。
　林檎は痛みを伴うと、感じるように吐息を漏らす。林檎の局部が煌めいている。
左手の二の腕には、すでに雲雀が彫られてあり、まだ色は入っていない。雲雀はくちばしに太陽の欠片をくわえている。 夏は刺青をいれるには、あまり適した季節ではない。彫った後は、なるべくなら風呂は控えたほうが良いからだ。二人はこの数日間、風呂に入っていない。季節は夏だ、汗をかき、放っておけば体臭が鼻をつく。二人は体を絡め、お互いの体臭を混ぜ合わせる。
ホームレスのセックスを見たことがあるだろうか？私はある。都会から廃除されたような公園で、野良犬のように汚らわしく交わる姿。私にはそれが美しく見えた。逃げ場のない人間の途方もない姿。
福生と林檎は、やみくもに1つになろうとしているように見えた。