七色の空

「唯一の冒険つづき２」
朝の通勤ラッシュを我慢してまで家族の為に働くお父さんの気持ちは分からないが、通勤電車で痴漢する男の気持ちは分かる。どちらも人間味に溢れ、そのけなげな姿は何ともいとおしい。あなんて人間とは愚かで無器用なのか、僕はあなたを尊敬します。が、しかし、痴漢はイカン。一生懸命生き抜くアナタを一瞬で否定し、相手も苦しめる、あまりに愚かな行いだから。福生の持論だ。
林檎は乗り込んだビルの男性トイレで痴漢した男の性器を容赦なく、しごいている。アイロンのかかったシャツははだけ、林檎の舌は男の乳首を転がしている。同時攻撃である。
敢えなく果てた男は、林檎に諭吉さんを三枚渡すと、「またお願いできないかな？」と懇願する。
林檎「痴漢もぉやめたほうがいいですよ」
男「本当に申し訳ない事をしたと思ってます」
林檎「売春は私のこれまでの人生で唯一の冒険ですから、金さえ払ってくれればいつでもどーぞ」と、トイレットペーパーに連絡先を書いて男に手渡す。
林檎は二面性についてあれこれ考えることはない。 林檎にとって生きるとは冒険である。冒険のない人生なんて、林檎にとっては卵子に辿りつけない精子と同じだ。
次の日、男は林檎に電話した。この広い日本でその電話にでたのは、行方不明の林檎を探す前島 健だった。
それ以降、男は痴漢をしなくなった。