中盤から物語の主人公は乳児期に母親に捨てられた青年(福生)へと移り代わり、その青年は夢を追いかけ、自分の命が残りわずかと知るや、自分を捨てた母親を探し始める。しかし、もうこの世にはいない母親探しである。けれど、ボタンのかけ違いのような展開が重なり、本当の母親ではない女性を青年は母親と思い込み、誤解はとけないまま物語は『はッぴぃエンド』で幕を閉じる。
 青年の母親を紙面に蘇らせるのが、林檎その人である。
福生は勘違いの母親に聴覚と視覚の不自由な美しい女性を選んだ。この世で目に見えるもの、聞こえるものに、さほど重要なものはない。そんな福生の決別も林檎は笑って茶化してみせた。
福生は死んでもまた、林檎に逢いたいと願うのだ。