七色の空

ﾁｬﾌﾟﾀｰ9つづき
西武新宿線に航空公園という駅がある。福生はその駅の名を初めて聞いた時、想像した駅の姿と実際の駅はあまりにもかけはなれていた。
福生は基本的に部屋から出るのは、どうしても見たい映画がある時だけだ。林檎に出会った日、深夜から早朝にかけて下北の劇場で見た映画は、名脇役と呼ばれる日本人役者をとりあげたオールナイト上映だった。福生は田口トモロヲという役者が好きだった。上映後、舞台挨拶もあり田口トモロヲは劇場にいる23人の客に対し、素晴らしいパフォーマンスを披露する。バチカブリ時代の名曲「Only you」の熱唱と巧みで笑えるトークである。
福生の想像を上回るお人柄とイカしたキャラクター。
人は他人から感動を得る為に金をつかう。物を買うのも、本来はそれをつくった人から感動をあたえられて物品を購入しているのである。消費とは全て受け身の行為である。
福生はダイレクトな表現者に憧れる。感動を介して相手と生で触れ合うことができるから。しかし、夢見たのは、相手と間接的に接する脚本家である。
その夢は叶った。
いや、この話は、福生の夢が叶ってスタートした物語である。