ﾁｬﾌﾟﾀｰ88
「はッぴぃエンド」

『はッぴぃエンド』は、福生と両親のことを描いた物語である。
周知の通り、福生の両親は、福生の出産が原因で離婚し、福生は乳児期に母親に棄てられ、捨て子となった。
福生が描いた物語とは、不幸な自分をひけらかし、ろくでなしの両親を非難するような内容のものではない。むしろその逆に近いかも知れない。
舞台は東京だ。田舎で捨て子となった青年が、東京に夢を追いかけて上京する。正に福生自身のことを描いているに過ぎない。その青年は東京で素敵な女性と出会い、夢なかばにして自分の命が余命いくばくもないことを宣告される。
現実に起きていることとの違いに言及するのであれば、それは、
第一に物語の中の青年は出会った素敵な女性と結ばれることはないということ。
第二に青年は死の宣告の後、奇跡的に生き残る。
第三に青年は障害をもっていない。
第四に青年は自分を棄てた母親と再会する。
以上４点が類似する現実との大きな違いである。では、具体的にどのような物語なのか、ダイジェスト版で紹介することにしよう。

『はッぴぃエンド』

物語は滋賀県にある日本一大きな湖の閑な湖畔に捨てられた幼い赤ん坊の泣き声で幕を開ける。