「ねぇねぇ...知ってる?」
親友の桜結がふいに話しかけてきた。
「...何を?」
私は何のことか分からず、そう答える。「実は...翔湊くん、転校するんだって...」
翔湊くんとは、私の片想いの相手。

信じられない......
「...もぉ~。ヤダなーそんなわけないよ~」
「...菜夜花……ホントなんだよ...」
桜結の言葉を聞いたとたん! 涙がこぼれ落ちそうになった。

「わ、わたしっ外の空気吸ってくる!」

私の気持ちを知ってか知らずか、
桜結はただ一言、

「...いってらっしゃい。」

そう言ってくれた。

――――――――――――――――――――――

涙がこぼれ落ちそうになるのをこらえて、
屋上への階段をあがる。

キィ…………バタン。

「......はぁ……。」

……ポタッ

ついに涙が溢れてしまった。

「うぅ〜...翔湊くん、転校するなんて
やだよ~。せっかく同じクラスなのに」

……ぐすっ……ずビッ

「オレの事、呼んだ?」

聞こえるはずのない声が返ってきた……。

「……え?」

左右を交互に見ても、誰もいない。

「……空耳かな?」

ポンッ

「ヒッ!!!」

急に肩をたたかれた。

おそるおそる振り返ると、そこにはなんと
私の片想いの相手...翔湊くんがいた。