「僕もさっき初めて知ったとこなんだけど、メンバーとかがおいしいって言うからさ。空井さんと一緒に行こうと思ってて。誘えて良かった」
「そっか」
「寒いから、早く入ろう」
ぎゅっと力の入った手。引かれるままに、店内へ足を踏み入れた。店内は甘い香りが漂っていて、それだけで美味しそう。
……流されて、ダメだなあと思う。でも、まだ一緒にいたい気持ちもあって。困ってる。
あたしなんかじゃダメだと思う一方で、佐久真といたい。別れるときに未練なんかないと思ってたのに。
あの歌声を聴いてしまったから。気づいてしまったから。簡単に別れを告げることができなくなってしまった。
「美味しそうだね」
「うん。メロンパンて結構種類があるんだね。空井さんはどれがいい?」
「え、普通のメロンパンかな」
ラスクやチョコチップのものもあったけど、美味しいと聞いたからにはまずプレーンのもがいい。もう来ることはないだろうけど。
家族にもと、お土産用に自分のも合わせて4つ買うことにした。



