走ってる。

なぜ、走ってる?

存在を確かめるため?

怖い。

もし僕がいなかったら?

存在して無かったら?

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い...

恐怖が襲ってくる。

でも、遅かった。

誰かがいた。

誰かが...

でも、誰かは僕に気づいてない...

心臓が早くなる気がした。

破裂しそう。

息が荒くなる感覚がする。

「あ、あのっ...」

気づかない。

僕は本当にいるのか???

もう一度、声を振り絞って出してみる。

「あの!」

誰かは振り向いた。

「どうかしたのかい?」

誰かは居るかも分からない僕の声に反応してくれた。

「ここはどこですか?」

僕は問いかける。

自分の存在は怖くて聞けなかった。

「ここはここだよ。けれど、君はここにいるべきではないよ」

彼は優しく微笑みながら答えてくれる。

「貴方は何故、ここにいるんですか?」

彼の笑顔が少しだけ崩れた気がした。

それが一瞬だけだったのか、気のせいと紙一重だった。

「それは...歩いていたんだよ。歩いていたらここへたどり着いたんだ」

彼は僕の返答を聞かず、僕の背中を押す。

「大丈夫。君は存在してるよ。ちゃんと居る。私がこうして触れるのだから。だから、自分をしっかり持って先へ、もっと遠くへお行き」

その人は僕の言えなかった問いを解決してくれた。

お礼を言いたく、後ろを振り向いた...