不安気に訊ねた私に、彼は優しく微笑んだ。


「大丈夫。君と俺がタッグを組んでるんだ。あっという間に終わっちゃうよ」


そう言った彼は、次から次へと修正箇所を消してゆく。
私は、その新しくされたキャンバスに新しく数字を書き入れる。



いつしか仕事に対する私のモヤモヤまで、彼は綺麗に消し去っていた。


予定通り。
会議が始まる時間までに全てを修正し、課長のデスクへ届ける。


「課長、修正完了しました。ここに置きますね」

「あぁ。やはり君に頼んで正解だったな。仕事が早い。助かったよ」

「いえ。失礼します」


私は課長のデスクから、窓際のデスクへ戻る途中。
スキップしたい気持ちになっていた。

雑用一つにさえ、上司は誰に頼むかを考えて声をかけていた事を知ったから。

それは、私が信用されている証でもあるのだと気づいた。


「どうだった?」

「うん。お礼まで言われた」

「よかったね」

「……ねぇ。これからも私の間違いを正してくれる? 嫌な気持ちも綺麗に消してくれる?」

「君が望むなら。いつだって」


そう言って優しく微笑む彼の頭を、私はそっと撫でてみる。



【完】



擬人化=修正テープ