彼女の酸素マスクの内側が曇った。
何か言おうとしていた。
俺はひざまずき、彼女の口元に耳を近付けた。

「…しょうがないなあ…先輩…」

かすれた声は、少し笑っていた。

「…でも…来年がありますって…。」

「ああ、うん…。」

彼女は、窓の方に目を向けた。

「私も…もう1回、
 …3年生…頑張らなきゃ。」

そう言う彼女の瞳を見る。
窓枠の向こうに、ほんの少し、ビルの上に立つクレーンが覗いていた。