気付いたらもう、高校の校舎は目の前にせまってきていて。
「……よし、愛ちゃん!」
柚月は急に何かを思いついたみたいに、私を見てにこっと笑った。
さっきまでとは180度違う、いたずらっ子のような笑顔。
柚月は私の手首をガシッと掴むと、そのまま私の手を引いて勢いよく走り出した。
「え、え、柚月?」
「愛ちゃん、走るよ!」
「いやっ」
走るよ、じゃなくて、もう走り始めてるじゃん……!
なんて言葉はのどに引っ掛かってでてこない。
「ほら愛ちゃん、遅いよ。もっと速く!」
私たちと同じ制服を着たたくさんの生徒の間を颯爽と走り抜ける。
校門もそのまま通りすぎた。
初めは“柚月バカじゃない?”って思ってたのに、校門を通りすぎた辺りからなんだか楽しく感じている自分がいて。
いっつもはマイペースでほんわかしてる柚月だけど、突然こうして予測不可能なハメを外した行動をとる柚月。
……風を感じた分だけ、気分がとってもさっぱりしていくような気がした。
やっぱり私は柚月が大好きだなと、改めて思えた。



