翔平がやられちゃう……!
だ、だれか助けて……。
なんて心の中で思っても、怖くて声にもならない。
このあとに起こる悲劇が安易に想像できて、私は反射的にグーっと目をつむった。
……でも。
『うぐ……っ、ってえ……』
私の耳に入ったのは、翔平のうめき声じゃなくて、先輩の声だった。
そーっと、片方ずつ恐る恐る閉じていたまぶたを上げると、そこにはあり得ない光景が広がっていた。
私は思わずゴクリと唾を飲み込む。
……だって私の瞳に映ったのは、先輩に殴られた痛々しい翔平の姿じゃなくて。
先輩の腕をねじり曲げる、翔平の姿だったから。



