私もはにかみながら蒼汰に手を振る。
「蒼汰、ごめんね」
改札口を通って私の横に並んだ蒼汰を見上げながら申し訳なさそうにそう言うと、蒼汰はなぜか私の顔をジーっと見つめた。
……え、なに?
私の顔、なにかついてるのかな。
やっぱり化粧が落ちてて汗もかいてるから、可愛くないって思ったのかな。
私がいろんなことを考えて不安になっていると、蒼汰はそっとまぶたを伏せた。
「……愛莉、ここまで走ってきただろ」
ちょっと不機嫌な声で言ったのは、蒼汰。
「え、走ってきてないよ?……うそうそ、ごめんなさい。走ってきました……」
嘘をついた私をジッと睨み付けてきた蒼汰にたじろいで急いで謝ったのは、私。
蒼汰ははあっとため息を吐いて、それから私の頭にてのひらをのっけた。
「前も言っただろ、愛莉は女なんだから無茶するなって」
「……だって、遅れると思って。今日、家出るのが遅くなっちゃったから」
「……だから。俺は男で愛莉は女なの。男の俺が先にきて待ってるのが当たり前」
私がシュンとしていると、蒼汰は少しだけ眉毛を下げて私の頭にのせた手をわしゃわしゃとし始めた。



