楽しかった一日のデートももう終わり。
私と蒼汰は横に肩を並べて、帰りの電車をホームで待っていた。
「……ねぇ」
「なぁ」
私が蒼汰に話しかけようと口を開いたとき、蒼汰も私に話しかけようとしてくれていたみたいで、ふたりの声が同時に重なる。
「あは、声かぶっちゃったね。私、今日は楽しかったって言いたかったんだけど……蒼汰はなんだったの?」
私は蒼汰を見上げながら、首を傾げた。
蒼汰は横目で私を見ながら、恥ずかしそうに髪の毛を触っている。
そのせいで髪型が少しだけふわっとして、蒼汰が子犬みたいに見えた。
「……いや、なんでもない」
蒼汰が指先を鼻に移動させながら言う。
「え、気になるじゃん!ねぇ、蒼汰、何言おうとしてたの?」
私が負けじと蒼汰の顔を下から覗き込むと、蒼汰は私を睨み付けてから視線をスッとそらした。
蒼汰のそんな睨み、怖くなんてないもんね。
だって蒼汰がこの仕草をするときは、決まって照れているときや恥ずかしがっているときだから。



