先輩が悔しそうに立ち去ってからは何事もなく、中学校までの道を歩き出した私と翔平。
『ねぇ、翔平』
ふたつ並んだかげを歩きながら見つめて、ひとつ息を吸い込むと私は翔平の名前を呼んだ。
『ん?なんだ?』
翔平が私を見下ろす。
『あのね、ありがとう』
続けてそう言う私。
改めてお礼を言うのがなんだか恥ずかしくて、私はそっと顔を俯けた。
……ドクン、ドクン。
私の胸が、恥ずかしさからかいつもより少し速く脈を打つ。
しばらく返事がなくて不安に思っていると、翔平はいきなりぷはっと吹き出し、笑い始めた。
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