『あー……。疲れた。』

「おう、お疲れ。」

酒場のどんちゃん騒ぎの中、レンはビールを一息に飲むとテーブルに突っ伏した。

『ベル、ちょっと冷たい。』

「アホ言え。俺はもともとこんな感じだろ?」

『そーだった…。』

ベル…もといベルベット・マクゴナリアはクスリと笑うと、ビールを一口飲んでそっとジョッキをテーブルに置いた。

「ったく、お前は兄の手を煩わせるのが趣味なのか?」

『違うよ。ナギ兄さんは放置してくれるもん。アキ兄さんとランが過保護なだけだもん。』

「…妹の手まで煩わせているのか。」

べしっと頭をたたかれて、レンは頬をふくらませた。

「ランは私のことを反面教師にしたみたいで、私とは真逆の真面目な努力家に育ったんだよー。しかもアキ兄さん大好きだから、アキ兄さんが二人いるみたい…。」

ベルベットは、レンのグチを聞き流しながら肴をつまんで、ビールをちびちびと飲んでいた。
しばらくして、ふと思い出したようにグチり続けるレンの頭をジョッキで小突き、言った。

「そういえばユニコーンの霊薬の精製、もうそろそろ終わるんじゃないか?」

『えー?大丈夫だよ。9日の朝5時までだから。』

「今、9日の朝4時半なんだが。」

。。。

数秒の沈黙。レンは時計を見るやいなや

『おっちゃん!お勘定!』

と叫んでハイト銀貨をテーブルに叩きつけ焦って店を出ていった。

「あのー…お連れさんはどうします?」

「…そうだな。もう少し飲んでいく。」

ベルベットは、焦ってゲートの存在を忘れている友人のことを心の中で笑いながら、ジョッキを傾けた。