あっという間に亜依里の三回忌


誠実さんと母さんと琉成

そして、井原家




今の花菜は、亜依里を知らない



俺の妹って、だけ



だけど、花菜は泣いていた


「何で泣いてるんだ?」

「わかんない…」


胸元を左手できゅっと握って

ぽろぽろと涙を流す


「少し休んだ方がいいな」


誠実さんが、俺達を別室に移し

布団に花菜を寝かせた

目を閉じてすぐだった


「伊緒里… 今日で亜依里とお別れして
もう、私達は表に出られないから…
伊緒里… この前の… 嬉しかったよ
ありがとう 」

「え…待て」


「お兄ちゃん…
私と花菜ちゃんで、今の花菜ちゃんを
なるべく長生きさせるからね!」

「伊緒里… 責任とか感じなくていいから
本当に好きな人と一緒になって…
あたし、亜依里と仲良くするから
さよなら」

「お兄ちゃん…さよなら」


「待てって!!交互に喋んな!!
訳わかんなくなるから!!花菜!亜依里!」




勝手すぎだろ!!!!



どんなに揺すっても、花菜も亜依里も
出て来なかった


それどころか


スースー 寝息たてて

気持ち良さそうに


「伊緒里君」


とか、寝言言うし



帰る前に様子を見に来た


朔哉に今の出来事を話した


「伊緒里… 今の花菜に恋愛感情あるか?」

「花菜にさ、妹と一緒で複雑だからって
別れを切り出したんだ
でも……どんな花菜でも好きって気持ちは
変わらないんだ
だから、本当に結婚したいって思ってる」

「明日、記念日だな」

「うん…もう一回プロポーズする!!」

「ありがとう……伊緒里…」


朔哉が目元を拭きながら

「あー線香って、目にしみるよな……」


意地の塊、花菜の台詞

やっぱりコイツら兄妹だな


「本当、目が痛ぇな」



扉の向こうに皆がいたなんて

知るよしもなく



意地張り合いながら

2人で泣いた