数時間ぶりに戻ってきた俺の部屋は何故か酷く懐かしく感じた。

もう、どこにもない雑誌の山

もう、揃うことのないスウェット

冷蔵庫には冷えたビール

でも、もう、ビールと一緒にグラスが出てくることもない

桃のジュースに冷蔵庫のスペースを邪魔されることもない

ふいに薬指のそれが冷たく感じて外すと流しの中の水を張ったボールにぽちゃん、と沈めた。

あぁ、もう帰ってこない

最後にもう一度名前を呼んだらよかった

最後にもう一度あの笑顔が見たかった

あぁ、でもできない

できなかった

最後にもう一度きつく抱きしめて行くなよなんて言ったら考え直してくれただろうか

そんなこと、できるわけない

あいつの夢を俺が邪魔する権利なんてどこにもない

あぁ、でもやっぱり

何にも変えられないくらい大切で




俺が













幸せにしたかった










【完】