音楽室に入り、まず最初に目に入ったもの…
それはベートーベンやモーツァルトなどの肖像画…
俺はベートーベンと目が合ったので軽い会釈をしてみた。
「………。」
もちろんベートーベンは完全に俺を無視する。
むしろベートーベンの目が俺を馬鹿にしているような錯覚さえ感じた。
『あんた誰に挨拶してんのよ…』
水橋さんの目が、少し引き気味になっているような錯覚…いや、これは錯覚ではなかった。
「あっ、いや…別に…ところでさ!何で俺を誰もいない音楽室に連れてきたの?」
『カチッ』
水橋さんは音楽室に鍵を閉め、俺に近付いてくる。
「本当に何も分かってないのね…」
「えっなにが??」
「童貞でしょ?」
「な、何で…そんなこと…」
「月見くんは…女の子の気持ちなんか全然わかってない…」
水橋さんの声のトーンが下がる…そして急に切ない表情に変わった。
「私…今まで男の子を好きになったことなんてなかった…。」
「でも…命懸けで私を助けてくれる、月見くんを見て…私は…。」
俺は何も言えず、ただ水橋さんの話しを聞くだけだった…
「実は私…昨日の夜…月見くんと大杉のお父さんが帰った後に、大杉に言われたの。」
「『月見は水橋のことが好きだ』って。それ聞いた時、すごく嬉しかった。でもその後…」
「大杉は続けてこう言ったの…」
『その月見よりも』
『俺は昔からお前のことが好きだ』
「えっ!!??大杉が水橋さんに…告…白…した…」
余りの衝撃に…
俺の頭の中ではベートーベンの『運命』がオーケストラされていた
