僕の(わたしの)生きる世界1[完]

突然、話が飛躍してジェイクは戸惑う。

ミハイルが補足する。

「ステラは、元々は魔法も魔力も無い世界で生きていたが、亡くなった後、神の気紛れでここに転生した」

アルロスは、神の顔を思い浮かべると、
納得の表情をする。

「わたしは、佐々木 海斗 という男として、32年生きてた。」


「ステラは、前世で男性で、その記憶もあるってこと?」

ジェイクが整理して、そう言った。

「だから、私が指導者としてここにいるのです。それに、聖属性を教えれる者はこの世界にはいませんから。」


その時のジェイクは、別のことを考えていた。

(男性の記憶…。男性の心もあって、でも身体は女性…。ステラさんは、男性と女性…。どっちに恋をするんだろう?)


その思考を読んだミハイルは、思わず吹きそうになった。



それと同時に、何かがチクリと傷んだ気がした。

経験がないミハイルには、それが何なのか、分からなかった。


「ジェイクさんは、総帝様としてずっと戦いの場で過ごしていますね。ジェイクさんは、とっても優しくて、皆のために頑張ってる。でもいつも一人でいて、孤独なんじゃないかと…。だから、そんな頑張ってるジェイクさんを妖精達が心配しているんです。そして、わたしも。」

ステラの言葉に、ジェイクは否定しようとした。

総帝になりたいと思ったのは、自分。

この国の人々を助けたいと思ったのは、自分。

姿を偽り、話すことも禁じられることを受け入れたのも、自分。

しかし、確かに孤独だった。

ポーロは執務の業務でいつも忙しい。

特殊部隊チームに、子供が居ることすら通常はあり得ないのだから。

ジェイクの能力や魔力値を知らない、特殊部隊チームの中、元陸帝の人脈ある独身のポーロだから、ジェイクの境遇を考えて、特別に受け入れられただけなのだから。

特殊部隊チームの任務は、常に危険と隣り合わせでもある。

独身を貫くものも多いが、家族を持つものは、特殊部隊チームの敷地とは別の場所に家族は暮らしていた。


「僕は、孤独なんかじゃ…。ううん…。確かに、僕にはポーロがいつも見守ってくれていて、孤独なんかじゃ無いんだ。僕は、僕を知ってるアルロスやデビルも居てくれる。それでも、僕は、僕自身を皆にも知って欲しいのかもしれない…。だから、そういう意味では、孤独なのかもしれない。」


「ジェイクさんは、これから、クラスの皆に知ってもらえば大丈夫。それに、わたしもいる。」