何故、疑問に思わなかったのだろう…。

それは、キーリ家の令嬢として、
素直に大事に、不自由なく育てられたからだった。

ステラは気付いた。

ぬるま湯に浸かっていたことに。

だけど今は、佐々木 海斗の時の32年分の経験の記憶がある。



「ミハイル?何故15年もの間、姿を見せなかったの?」


…。

……。

………。


長い沈黙の後に、ミハイルは言った。


「佐々木 海斗が不細工過ぎたから」


「…っは~ぁぁぁあ!!? ちょ! それは、確かに事実だけど!」


ステラは、思い出したくない記憶まで思い出した。

「そんな様な理由で振られたっけ…。女子に産まれてみて、その気持ちが分かった様な気がする…。」


「神が早く行けって…。でも、来てよかったです。あの 佐々木 海斗が、こんなにも美しい少女になっているとは…神は分かってる。」


「ミハイル…。一言だけ言わせて?」


「何ですか?」


「男として、人として最低」


「ステラ? 天界の者に性別は有りません。私は、性分的に男が合うからそちらで過ごしていますがね? それに、私は人ではありません。残念です。」



なんと言う正論…。

ステラの惨敗であった。