僕の(わたしの)生きる世界1[完]

ルカが、ミハイルの言葉を聞くと泣き出した。

その隣では、既にモニカがヘンリーの腕に掴まり泣いていて、そんなモニカの背中をさすりつつ、冷静であるヘンリー自身も自分の感情を抑えようとしていた。

泣いてしまったら、ジェイクは目覚めないんじゃ無いか?

泣くことを、ジェイクは望まないのでは無いのか?

ヘンリーともう一人、同じことをステラは考えていた。

全員が詰まる中、会議室は泣き声と、国王の嘆き声だけが響いていた。

ポーロも、今は放心状態に居た。
本当は、ジェイクのそばに居たいのであろう。

そんな中、動いたのはタケルだった。

「父上!ジェイクが不在の今、父上が指揮を取らなくてどうするのですか?」

「しかし…。」

「父上が動かぬなら、即刻その席をお立ちください。俺がやる」

国王であるロイドは、息子のタケルに何かを言わねば、と思ったが、タケルの力強い視線と、タケルの気力に圧されて何も言えなかった。

国王は、落ちた。

「分かった。ガーナレス国を頼む。」

目の前で、国王交代の約束を交わされるのを目撃した帝達が息を飲んだ。

タケルの決断は、モニカを動かした。

「ヘンリー!私も決めましたわ!ううん、既に決めていましたの。」

ヘンリーは、涙の跡が残るモニカの顔を見る。

「お話し、喜んでお受けしますわ!ただ、一つお願いがございますの。」

ヘンリーは、モニカの涙の跡を指で拭きながら、お願いって?と聞く。

「それは、後でお伝えしますわ?」

そんな二人をタケルは、そっと見守って、すすり泣きしているルカの傍に行き、頭を撫でた。

ルカはビックリするが、タケルは気にせず、話し出した。

「皆!聞いて欲しい。正式には、まだ国王交代の手続きが済んでいないけど、ジェイクの件は一旦保留だ。」

タケルが皆の顔を見て言う。

「緊急事態だと言うのは、分かってる。だけど、しばらく様子を見させて欲しい。俺が決断をする。」

皆、それぞれの思いはあるが、どれが正しいのかは、分からない。
皆は頷いた。

「ポーロは、3日の休養を言い渡す。ジェイクに付いててくれ。その間の案件の振り分けは、俺がやる。」

ポーロは、謝った。

「特殊部隊チームは、各領土のギルドとも手分けをして、街に結界を張ること。」

帝達が返事をする。

「ヘンリーとモニカは早急に自身の問題を片付けろよ?」

ヘンリーは無表情だったが、モニカが顔を真っ赤にして、頷いた。

ヘンリーは心の中で、タケルをど突いた。

「ルカは、俺のサポートを頼むな?」

「うん」

隣で頷くルカを見てから、最後にミハイルとステラを見る。

タケルにとって、ステラが問題だった。

きっとステラは、自分のせいだと思ってんだろうな?

タケルが考える通りだった。