僕の(わたしの)生きる世界1[完]

~ステラの部屋~

マッカーニーの洞窟から戻ったステラは、
部屋にいた。

いつものように、本を読む。

「ステラ?」

「どうしたの?」

ミハイルが、遅い時間に来るのは珍しかった。

「ステラは最近、何かあったのですか?」

「何もないわよ?」

ステラは、小さくドキッとした。

「私に隠しても無駄ですよ?ステラがため息をついている事を、心配している友人もいます。私に話せませんか?」

ステラは、本から顔を上げ、ミハイルを見た。

ミハイルが辛そうな表情をしていて、ビックリした。

そんな表情を見たのは、初めてだった。

ステラは、そんな表情をさせた事に後悔した。

「……。」

ステラは、手元の本を見る。

「ステラ…。もしかして、本が原因ですか?」

ステラは頷く。

そうか。佐々木 海斗の世界の文字や情報を、誌面として見ているうちに、ある種のホームシックのような状態なのか…。

ミハイルは、納得する。

「それは、私のせいですね?私が、漫画を持ってきたばかりに…。」

ミハイルは、自分自身に腹が立った。

「私は…。指導者失格です…。申し訳ない。」

震えながら謝るミハイルは、今にも消えそうで、居なくなりそうだった。

「違うの!!ミハイルは悪くない!」

ステラは、そんなミハイルを見て、咄嗟にミハイルを抱き締めた。

身長が180を越えるミハイルに、身長が160センチほどのステラは、ミハイルの胸に飛び込むような感じになった。



「ミハイルには、むしろ感謝しているの。佐々木 海斗の記憶はあっても、それが現実なのか、実感が無くて。」


ステラは、抱き締めたまま、顔を見上げミハイルを見る。

「でも、ミハイルが漫画を持ってきてくれたから、佐々木 海斗の世界は実在してるんだって、実感出来たの。だから、ミハイルのせいじゃないの。ただ、あっちの親や弟は、どうしてるのかなって…。たまに思っちゃうだけなのよ?」

ミハイルは、初めて神以外の者に抱きつかれて、どうしたら良いのか困った。

ステラの上目遣いに、赤面して冷静さを保つのに必死になった。

(わ、私は一体?こ、これは…。)

ミハイルの、震えの意味が変わってきたことに気付かないステラは、ミハイルが居なくなってしまうと感じ、涙が出そうになった。

そんな、ウルウルした表情をしたステラは言った。

「ミハイル?お願い、何処にも行かないで?」

ミハイルが悩殺された瞬間だった。

ミハイルは、ステラを抱き締めた。

「私は、何処にも行きません。私は、あなたの指導者ですから!」

(わ…。私は一体?)

そして、落ち着いた二人は我に返ると、勢いよく離れた。

ミハイルは、お休みなさいと転移していった。

ステラは、薄々気づいた。

仮にも振られたとは言え、佐々木 海斗時代に彼女が居たのだから。

どうしよう…。わたし、まさか…。
いや~!相手は天使だぞーー!!?
オイオイオイオイ

ステラの苦悶の夜だった。