だって私と虎ちゃんだよ?


付き合うとか、1番ありえない2人じゃん。


今まで微塵もそんな風に考えたことなんかないのに、虎ちゃんはそんな風に考えられるの?


ありえないでしょ。



「はぁ。やっぱ、もういい」



私の反応を見て、虎ちゃんはあからさまに大きなため息を吐いた。



「そんな冗談、二度とやめてよねー!」



少しだけドキッとしちゃったじゃん。


虎ちゃんにドキッとするとか、ありえないんですけどっ。



「……じゃねーよ」



「え?」



語尾しか聞こえなくて訊き返した。


何となく寂しそうな、傷付いているようなその横顔。


どうしてそんな顔をするの?



「なんでもねーよ。バーカ」



スネたような声と一緒に虎ちゃんの大きな手が、私の髪の毛をくしゃくしゃと掻き回す。



「ちょっ、やめてよね」



「うっせー。バーカ」



冗談っぽくそう言った虎ちゃんが悲しそうな顔をしていた理由を考えないようにして、私はいつものように何気なく振る舞った。



この日ーー。


結局武富君にクッキーは渡せなくて、帰ってから自分で食べた。


甘いはずなのに、しょっぱく感じたのはきっと涙のせい。