「え?俺のため?マジ?やっぱ咲彩は、俺のことを愛しちゃってるんだな」
「違うからっ」
パアッと顔を綻ばせる虎ちゃんを全力否定する。
「んな全力で否定しなくても……俺の咲彩への愛はホンモノなのに」
「変なこと言わないでよー!」
勘違いされるから、こういう冗談はやめて欲しいけど虎ちゃんはそれをわかってない。
きっと、なーんも考えてないんだと思う。
虎ちゃんが適当だから、付き合ってるって勘違いする人が後を絶たないんだ。
「ふふっ、仲良しだね。じゃあ私は帰るね!バイバイ」
「あ、うん。バイバイ」
クスッと笑うと、織田さんは私たちに背を向けて走り出した。
あの感じは絶対勘違いされちゃったに違いない。
まぁ慣れてるからいいんだけど、武富君にだけは絶対に勘違いされたくないよ。
「よっしゃ、俺らも帰ろうぜ」
虎ちゃんの中では、すでに私と帰ることになったらしい。
私の返事も聞かずに歩き出した虎ちゃんの後を、慌てて追いかける。
ホントにマイペースだな。
だけど憎めないのは、それ以上に虎ちゃんのいいところをたくさん知っているからなのかもしれない。
「待ってよー!」
「早く来いって」
歩幅をゆるめて、私が隣に並ぶのを待ってくれる虎ちゃん。
私と並んで歩く時はいつも、私のペースに合わせてくれる。
「そういえば、バスケ部の友達と帰らなくてよかったの?」
「あー、うん。あいつらとは、嫌ってほど毎日一緒にいるし。帰りまで一緒なのは暑苦しい」
「私だって毎日教室で会ってるじゃん」
月明かりに照らされた虎ちゃんの横顔を見上げる。
色気のある薄い唇と、スッと通った鼻筋のラインがすごく綺麗。
相変わらず整った顔をしてるな。
モテるのもムリはないよ。



