虎ちゃんの席は私の隣で、その横が武富君。
虎ちゃんがいなければ、武富くんと隣の席になれるのに。
そしたら話すチャンスなんかもあったりして、少しは仲良くなれるかもしれないのにな。
なーんて。
現実はそんなにうまくいきません。
「なにボーッとしてんだよ?咲彩のくせに生意気だな」
「ごめんごめん。虎ちゃんに会えて嬉しいよー!」
「棒読みされても嬉しくないし」
「だって、毎日会ってるじゃん」
「会ってても嬉しそうにしろよ」
「えー!」
ムッと唇を尖らせる虎ちゃんをよそに、いつ来るかわからない武富君が気になって仕方ない。
今は虎ちゃんよりも武富くんが大事。
虎ちゃんにバレないようにキョロキョロ視線を彷徨わせているとーー。
「よ、武富」
ーードキン
虎ちゃんの声に過剰に反応した私の心臓。
スッと視線を流すと、虎ちゃんに向かって「おはよう」と小さく会釈する武富君の姿があった。
あー。
やっぱりカッコいい。
朝から爽やかだし。
虎ちゃんはいいな。
朝の挨拶って、隣の席の特権だよね。
私も武富君に挨拶とかしてみたい。
さり気なくすればいいんだろうけど、武富君を前にするとうまく言葉が出ないんだ。
誰とでも気兼ねなく話せる虎ちゃんが羨ましいよ。