「これ、俺が一番好きなオススメの小説。良かったら読んでみる?」



「え!?」



差し出された小説は、タイトルからして明らかに推理小説じゃなかった。


淡いピンクとか水色が混ざった可愛い表紙。



「恋愛小説?」



「うん。主人公が男なんだけど、すっごい共感出来るんだよ」



共感、か。


ってことは、武富君は好きな人がいるってこと?


よくわからないけど知りたいから。



「ありがとう、読んでみるね」



少しでも武富君を知りたくて、何でもいいからお近付きになりたい。


本を受け取ると、席に座って早速表紙を開いた。



サッとあらすじを読むと、幼なじみに片想いをする男の子のお話だっていうことがわかった。


本の帯には『絶対号泣!切ない片想い』っていううたい文句まであって、かなり複雑な気分。



切ない、片想い……。



やっぱり、好きな人がいるってことだよね?


だったら嫌だな。


なんだか胸が痛かった。