「夏休みとか、ここ最近とか、たまにりんね公園でバスケの練習してるのを見かけるからさ」


「それ、ホント?」


「うん。毎日バスでそこを通るけど、たまにシュート練習してるの見かけるよ。そこで、颯太とよくボールを奪い合ったりもしてるし」


虎ちゃんが……。


バスケをやめると言っていたのに、今でも練習をしてる?


「ば、場所教えて……!」



柑菜から場所を聞き出した私は、ロールケーキが冷えるのを待った。


試食するつもりだったけど、居ても立ってもいられなくなって、ロールケーキを切り分けて綺麗にラッピングするとすぐさま学校を飛び出した。


何を話すかなんて決めてない。


だけど、走り出した気持ちと足は止まらなかった。


寒空の下を全速力で駆け抜ける。


寒さを感じないほど、鼓動が高鳴っていた。


地面を蹴って踏み締める足が痛かろうと、どれだけ息が切れて苦しかろうと私は走るのをやめなかった。


私は……私はっ。


バスケをしている虎ちゃんの姿が好きなんだ。


だから、ホントはやめてほしくなかった。


頑張ってほしかった。


でも、臆病な私はそれを伝えることができなかった。