「じゃあ、これをくるくる巻いてみて」


「え?これを?で、できるかな」



今作っているのはロールケーキ。


オーブンで焼き上げた生地の上に、生クリームやらカットしたフルーツを乗せて巻こうとしている最中。


っていうか、こんな大事な作業を私がしちゃって大丈夫なの?


失敗したら台無しなのに。



「や、やっぱり私にはムリだよ。柑菜、お願い」


「大丈夫だよ、失敗しても怒らないから」


「いや、悪いしさ。ね?」


「ダメダメ。何事も経験を積み重ねてうまくなっていくんだから」


「ううっ」



お菓子作りになると途端に厳しい柑菜に負けて、結局は私が巻くことになった。


ちょっと形が崩れたけど、それでも「初めてにしては上出来だよ」と柑菜は褒めてくれた。


あとは冷蔵庫に入れて冷やしたら出来上がり。


フルーツがたくさん入ってるから、食べるのが楽しみ。


でもやっぱり、私の中ではなにかが足りない。



「そういえば、末永君って部活やめたの?」


「え……?」



片付けをしながら何気なく柑菜が口にした言葉に一瞬固まる。