「エースの座はお前に譲る。これからは、お前がチームを引っ張ってけよ」
バスケが大好きで、クラスでも、おそらくチームでもムードメーカーだった虎ちゃんの言葉が信じられない。
「ふざけんなよ。なんか悩んでんだろ?俺に言えないのかよ?」
「べつに、そんなんじゃねーよ。今は、バスケしてても楽しいと思えないから。話はそれだけかよ?」
「なんで相談しねーんだよ?お前にとって俺は……なんなんだよ?」
「悪い、用事あるから。じゃあな」
虎ちゃん。
あれだけバスケが好きだったのに、急にどうして……?
なんでやめるなんて言うの?
……虎ちゃん。
固まったまま動けずにいると、目の前のドアが突然開いた。
予想外の出来事にビックリして肩が揺れる。
私に気付いた虎ちゃんは、驚いたように目を見開いた。
うわ……どうしよう。
「ご、ごめん……忘れ物を取りに来て。聞くつもりはなかったの」
「…………」
無表情にだんまりを決め込む虎ちゃん。
目が合うと、いつものようにスッとそらされてしまった。
もう私には、虎ちゃんは何も言ってくれない。
頑張るのが疲れてしまった理由も、バスケをやめると決めた心の内も。
今の私には、虎ちゃんのことが何ひとつとしてわからない。



