早く俺を、好きになれ。



そんなある日。


放課後、忘れ物を取りに昇降口から教室の前に引き返した時だった。



「なぁ、いい加減にしろよ。いつまで休む気だ?どんだけ迷惑かければ気が済むんだよ」



教室の中からそんな声が聞こえて、ドアに伸ばした手が止まる。


もう誰もいないと思ってたのに、中には誰かがいるようだった。



「お前、そんなに責任感がない奴だったか?中途半端に投げ出す奴だったのか?エースがそんなんでどうすんだよ!」



とても緊迫しているような、そんな空気が肌にひしひし伝わって来て息を呑む。


この声は……斎藤君?


確信はないけど、似ている気がする。


それに……エースって。


虎ちゃん?


思わずゴクリと息を呑んだ。



「俺、もうバスケやめるから」


「はぁ!?テメー、ふざけてんのか?」



やっぱり……この声は虎ちゃんと斎藤君のものだ。


「ふざけてねーよ。本気だし」


感情的になって怒る斎藤君と、怖いくらい淡々とした冷静な虎ちゃんの声。


バスケをやめるなんて……。


うそ、でしょ?


虎ちゃんから出た信じられない言葉に、バクバクと鼓動が激しく高鳴る。



「エースとしての責任感はねーのかよ?思うようにプレイができなくなったぐらいで、なに逃げ出してんだよ!」



ガンッと大きな音がしたかと思うと、そのすぐあとにガタンッとよりいっそう大きな音が響いた。


どうやら斎藤君が机を蹴って、それが倒れた音らしい。